第40話:【豆知識】不動産所得の確定申告——大家の「経費の考え方」と青色申告
不動産投資を始めて30年、確定申告は一度も欠かしたことがありません。最初の数年は何が経費になるのかも分からず、税務署の相談コーナーに通ったものです。今回は【豆知識】として、家賃収入がある人の確定申告の基本を整理します。
⚠️ 制度の考え方を分かりやすく伝えるためのもので、個別の税額・経費の可否を保証するものではありません。実際の申告は国税庁のサイトで最新情報を確認するか、税理士・税務署にご相談ください。
不動産所得は「収入−必要経費」
家賃などの収入は、税金の世界では**「不動産所得」**になります。計算式はシンプルです。
不動産所得 = 総収入金額 − 必要経費
これに給料など他の所得を合算して所得税・住民税が決まります。だからこそ、必要経費をきちんと計上できるかで手元に残るお金が変わります。
「収入」は家賃だけではない
見落としやすいのが収入の方です。家賃のほか、次も収入に含めます。
- 礼金、更新料、名義書換料
- 返還しなくてよい敷金・保証金(退去時に返す分は除く)
- 共益費名目で受け取る電気代・水道代など
「敷金は預かっているだけ」と思いがちですが、返さない分は受け取った年の収入です。
「必要経費」になるもの
国税庁が代表例として挙げているのは次のとおりです。
- 固定資産税・都市計画税
- 損害保険料(火災・地震保険)
- 減価償却費(建物の価値を毎年少しずつ経費にする)
- 修繕費、管理委託料、入居者募集の広告料
- 借入金の利息部分、税理士報酬 など
注意①:ローンの「元本」は経費にならない
返済のうち経費にできるのは利息だけです。元本はお金が出ても経費になりません。「返済で手元は減るのに帳簿は黒字で税金がかかる」——これが大家を悩ませる感覚で、返済方法の考え方は第18話に書きました。
注意②:「修繕費」と「資本的支出」
壊れた所を直す通常の修理は修繕費として全額その年の経費にできます。一方、価値を高めたり寿命を延ばす大きな工事は**「資本的支出」**となり、減価償却で何年かに分けて経費にします。外壁塗装や設備入替などは判定が分かれるので、大きな工事は見積もり段階で税理士に確認すると安心です。
「青色申告」で最大65万円の控除
確定申告には白色と青色があり、青色には大きな控除があります。
| 控除額 | 主な条件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記+e-Tax または電子帳簿保存 |
| 55万円 | 複式簿記で記帳し、決算書を期限内に提出 |
| 10万円 | 上記を満たさない青色申告者 |
ただし不動産の貸付で55万・65万を受けるには「事業的規模」が必要です。目安は——
- アパート等:独立した部屋がおおむね10室以上
- 戸建て:おおむね5棟以上(いわゆる「5棟10室」)
これ未満だと青色控除は最高10万円まで。家族に給料を払う「専従者給与」も事業的規模でないと使えません。最初の1〜2棟は10万円どまりになる人が多いですが、早めに青色にしておくと帳簿が残り、規模が大きくなったとき楽です。
申告の期限
原則翌年3月15日です(55万・65万の控除もこの期限内の提出が条件)。私の実感では、領収書とお金の動きをその都度メモしておくのが一番ラク。最近はe-Taxも整い、昔よりずっと申告しやすくなりました。
まとめ
- 不動産所得は「収入 − 必要経費」
- 敷金の償却分・礼金・更新料も収入に入れる
- ローンの元本は経費にならない(利息のみ)
- 青色申告+e-Taxで最大65万円控除。55万・65万は「事業的規模=5棟10室」が条件
- 期限は翌年3月15日
確定申告は慣れれば「1年の経営の成績表」を作る作業です。これから大家になる方は、早めに青色申告に切り替えておくことをおすすめします。
※一般的な制度の解説であり、個別の税務判断を行うものではありません。詳しくは国税庁タックスアンサーNo.1370(不動産所得)・No.2072(青色申告特別控除)をご確認のうえ、税理士・税務署にご相談ください。