第50話:賃貸の火災保険、高すぎるかも——自分で選べば年3,500円から。途中で変更もできる
借りる側シリーズの第3弾です。第48話で家賃の値上げ、第49話で退去費用を書きました。今回は火災保険——賃貸の契約時に、ほとんどの人が「言われるまま」入っているものの話です。ついでに言うと、この記事で50話になりました。
その保険、自分で選びましたか
賃貸を借りるとき、火災保険への加入はほぼ必ず契約の条件になっています。加入すること自体は当然です。大家の立場からも、入っていてもらわないと困ります。
問題は、どの保険に入るかです。
不動産会社が契約とセットで勧めてくる保険は、2年で1万5千円〜2万円くらいのものが多い。一方、ネットで入れる賃貸向けの保険なら、必要な補償が揃って年3,500円程度からあります。差は2年で1万円以上。保険を販売した側に手数料が入る仕組みなので、勧められる保険が割高になりがちなのです。
火災保険は「3点セット」で理解する
中身は難しくありません。賃貸向けの火災保険は、実質3つの補償のセットです。
- 家財の補償——自分の家具・家電・衣類が、火事や水漏れ、盗難などで被害を受けたときの補償。自分のための保険です
- 借家人賠償責任——火事や水漏れで部屋そのものに損害を与えてしまい、大家に賠償するときの補償。これが大家が加入を求める本体です
- 個人賠償責任——水漏れで階下の部屋を濡らしてしまった、というような他人への賠償の補償
年3,500円程度のネット保険でも、この3点(借家人賠償2,000万円・個人賠償1億円クラス)は揃います。
保険は自分で選べるのが原則
確認すべきは、賃貸契約書の火災保険の項目です。
- 「貸主の指定する保険に加入すること」と書かれていなければ、どの保険会社を選ぶかは自由です。次の契約や更新のとき、自分で選んだ保険の証券を提出すれば済みます
- 「指定」とあった場合も、あきらめる必要はありません。「同等の補償内容の保険に変えたい」という相談は、いつでもできます。特に更新のタイミングは、話が通りやすいようです
- 切り替えるとき、いま入っている保険は途中で解約できます。残り期間分の保険料は返金されるのが一般的です(計算は月割りなど保険会社所定の方式)。「もったいないから更新まで待つ」必要はありません
具体的な商品は「賃貸 火災保険 ネット」などで検索して、借家人賠償2,000万円以上・個人賠償付き・年間保険料の3点で比べれば、選び間違えることはまずありません。年間保険料の目安は4,000〜7,000円程度。年1万円を超えているなら、割高を疑っていい水準です。
うっかり壊したとき、保険が役立つことがある
これは知らない人が多いのですが——賃貸向けの火災保険には、借りている部屋のドアや窓ガラスなどの修理費用を補償する項目が付いていることがあります。
模様替え中に窓ガラスを割ってしまった。子どもがドアを壊してしまった。そんな「うっかり」の修理に保険が使える場合があるのです。退去時に精算でもめる前に、住んでいる間に保険で直せてしまう可能性があります。
部屋だけではありません。私が聞いた例では、子どもが液晶テレビを倒して壊してしまったとき、保険金が出たそうです。テレビは自分の持ち物なので、こちらは「家財」の破損・汚損の補償が対象になった形です。
ただし、どんな事故が対象になるかは保険ごとに違います。大事なのは3つ。
- 自分の保険の補償内容(「修理費用」「破損・汚損」の項目)を一度見ておく
- 壊してしまったら、すぐ保険会社に連絡する。時間が経ってからでは使えないことがあります
- そして、保険金が出るかどうかは、申請してみないと分かりません。電話の窓口で「それは対象外です」と言われても、正式に申請したら支払われたケースがあります。窓口の回答はあくまで簡易な目安。正式な申請をして、書類で判断してもらうのが本来の手続きです。あきらめる前に、申請まで出してみることです
なお、普通に住んでできた傷みは、そもそも借主が払う必要のないお金です(第49話に書きました)。保険の出番は「うっかり壊した」ときだけです。
大家として、こう思う
大家の本音を言います。こちらが本当に必要としているのは、借家人賠償責任保険にきちんと入ってくれていることです。万一の火事のとき、無保険の入居者だと、お互いに取り返しがつかないからです。
裏を返せば、どの保険会社を選ぶかは、大家にとってはどちらでもいいのです。契約書の「指定」も、その趣旨は「無保険を防ぎたい」であって、「特定の保険で儲けたい」ではないはず(そうでないとしたら、その分どこかで誰かの手数料になっています)。同等の補償があるなら、借主が保険を選ぶことを大家が嫌がる合理的な理由は、ほとんどありません。
まとめ——賃貸の火災保険で覚えておくこと
- 火災保険は**「家財・借家人賠償・個人賠償」の3点セット**で理解する
- 契約書に**「指定」の文言がなければ、自分で選べる**。必要な補償は年3,500円程度から揃う
- 「指定」があっても、同等補償への変更の相談はいつでもできる(更新時は特に通りやすい)。途中解約でも残り期間分の保険料は返金されるのが一般的
- 部屋や家財を**「うっかり壊した」ときは、保険が使える場合がある**。補償内容を一度確認し、壊したらすぐ連絡
- 保険金が出るかどうかは、申請してみないと分からない。窓口で断られても、正式な申請までしてみる
- 大家が求めているのは借家人賠償に入っていること。保険会社がどこかではない
※本記事は情報提供を目的としており、特定の保険商品への加入を推奨するものではありません。補償内容や保険金が支払われる条件は保険ごとに異なりますので、必ず約款や保険会社の説明でご確認ください。